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AI音楽で収益が出ても安心できない理由|著作権を軸にした4つの鍵

AI音楽で収益が出ても安心できない理由著作権を軸にした4つの鍵
よくある疑問

Q. AIで作った曲をそのまま配信しています。この状態って、何の権利で守られてますか?

A. 著作権を含む権利ですが、AI使用の如何を問わず、楽曲に著作権が発生しているかがポイントです。そのAI楽曲に著作権はある状態でしょうか。

この記事では、音楽AIツールで作った楽曲に関係する権利を4つのパートで説明していきます。

音楽AIツールで曲を作り始めると、「著作権はどうなるの?」という疑問が出てきます。でも実際に調べてみると著作権や隣接権、あるいは規約上の所有権など似たような言葉が出てきて、どれが自分に関係するのかよくわかりません。

そういう状態で配信を続けている方もきっと多いと思いますが、楽曲を安全に収益化する前段取りになるものを整理していきます。著作権というものは文化の発展を促進し、表現者を守る盾にもなります。

いくまささん

いざというときの皮下脂肪みたいですね。

本記事は法令や政府ガイドライン、公式サイト等を根拠とします。
一般的情報を基礎とし、個別具体的な助言ではありません。
利用規約は随時更新されるため、最新規約を必ずご確認ください

目次

著作財産権|稼ぐ・止める

音楽AIツールで楽曲を作り、配信や納品をしている人に最も直接的に関係する権利です。

「著作権がある」とは、ここで説明する支分権の束を持っていることでもあります。

問題構造:著作権は支分権の集合体

「著作権」は1つの権利ではありません。著作権法は著作権の内容として、複数の「支分権」を定めています(第21条〜第28条)。

いってみれば著作権という傘の下に、束になって入っている個別の権利が支分権で、著作物の使われ方により別の支分権が関係します。

音楽の制作・配信に関係する主な支分権は3つです。

著作権における支分権の一部
  • 複製権(第21条)
    楽曲をデータとして保存したり、CDに焼いたりする行為に関わる権利。「コピー」全般がここに含まれます。
  • 上演権・演奏権(第22条)
    ライブ演奏や、CDやデータを再生して公衆に聴かせる行為に関わる権利。
  • 公衆送信権(第23条)
    ストリーミング配信やダウンロード販売など、インターネットを通じて公衆に届ける行為に関わる権利。

これらはいずれも「著作権者だけが独占できる専有権」です。著作権者以外の者がこれらの行為を行うには、著作権者の許諾が必要になります。

著作権があれば、無断でコピー・配信・演奏した相手に対する、差止請求や損害賠償請求という選択肢が増えます。

出典:e-gov法令検索「著作権法」

問題実例:どの行為にどの権利が関係するか

各行為に関係する支分権を仕分けすると、次のようになります。

行為関係する支分権
楽曲ファイルを保存・コピーする複製権
Spotifyに配信する公衆送信権
ライブやイベントで再生する演奏権
BGM素材として企業に納品する複製権+場合によって公衆送信権

「配信しているから公衆送信権が関係する」「保存しているから複製権が関係する」という形で対応しています。

ただ、AI生成楽曲がこの構造に乗るかどうかは、著作権の発生次第でしょう。アメリカはこの点についてかなりはっきりノーと言っています。

実務的示唆:著作権なしは止める根拠が薄い

著作財産権は財産として譲渡できる権利です。売買や契約での移転が可能で、企業がクリエイターから「著作権ごと買い取る」という場面はここに当たります。

前提として、著作権そのものが発生していなければ話が始まりません。プロンプトのみで生成した楽曲には著作権が発生しない可能性があり、著作権が発生していなければ、先述の表に挙げた行為が無断でも差止や損害賠償の請求はできないと考えるべきです。

音楽AIツールで楽曲を発注・利用している企業担当者もこのレールから外れず、想定されるのは著作権のない納品物を受け取った場合などでしょう。その楽曲を競合他社が同じように使い始めても法的に対抗できないことが起き得ます。

次の記事でAI生成曲の著作権に関して触れていますのでご参考まで。

著作者人格権|名前と意図を守る

著作者人格権は著作財産権と異なり、「譲渡できない」という点に大きな違いがあります。

契約で移転しようとしても無効になる権利で、発注や外注が絡む場面では特に見落とされやすいでしょう。

問題構造:譲渡できない権利がある

著作者人格権は著作権法第17条第1項に規定されており、以下の3つで構成されます。

著作者人格権
  • 公表権(第18条)
    著作物をいつ・どのように公表するかを決める権利
  • 氏名表示権(第19条)
    著作物に自分の名前を表示するかどうかを決める権利
  • 同一性保持権(第20条)
    著作物を無断で改変されない権利

また、著作権法第59条には次のように定められています。

著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡することができない。

出典:e-gov法令検索「著作権法第59条」

著作財産権は売買や移転ができますが、著作者人格権は譲渡そのものができません。

「すべての権利を買い取った」という契約を結んでも、著作者人格権は契約外として残ります。

いくまささん

作品は作者の分身って言いますからね。

問題実例:外注が関係する場面

クリエイターが音楽AIツールで楽曲を制作し、企業に納品するケースで考えます。

制作プロセスに人間の創作的寄与があれば、著作権が発生する状況も考えられ、そうすると著作者人格権はクリエイター側に残ります。

企業が著作財産権の譲渡を受けていても第20条の同一性保持権があります。実際に業務委託をする場合にここまで細かい設定はないと思われますが、クリエイターに無断で楽曲を大幅に改変すれば権利侵害と評価される余地も残ります。

契約書に著作者人格権不行使特約を明記しておくことが肝要で、もっともそれだけで安心とは言えないものの、改変やAI利用に関する条項を含めた設計が必要でしょう。

音楽AIツールを使った楽曲の外注・受注が増えている今、確認しておきたいポイントです。

実務的示唆:著作権の発生が前提

著作者人格権が問題になるのは、著作権が発生している場合です。仮に楽曲がプロンプトのみで生成したもので著作権が発生しないのなら、著作者人格権の問題も起きないことになります。

AI楽曲は著作権の発生が絶対とは言えませんが、著作権が発生している楽曲を納品したり取引したりする場面では、著作財産権と著作者人格権がセットで関係します。

「権利を取得した」という場合でも「人格権を取得した」とは言えないので、発注側も受注側も互いに理解しておく必要があります。

著作隣接権|演奏・録音に関わる別レイヤー

よくある疑問

Q. 著作権をクリアしていれば、それで問題は全部なくなりますか?

A. そうとも限らなくて、楽曲には作った人とは別のところから関係してくる権利があります。「著作隣接権」と呼ばれるものです。

著作隣接権は著作権とは別に存在する権利です。著作権を「作った人の権利」とするなら、著作隣接権は「実際に演奏したり録音した人、あるいは原盤を制作した人の権利」です。

音楽1曲に両方が重なって存在することも珍しくありません。レストランを取りしきる支配人と調理するシェフが別の役割を担うようなもので、ひとつの作品でも異なる立場にそれぞれ権利が発生するイメージです。

問題構造:著作権とは別のレイヤー

著作隣接権は著作権法第89条以下に規定されていて、次のような人に認められています。

著作隣接権が与えられるもの
  • 実演家(歌手・演奏者):
    自らの歌唱・演奏に関する権利。録音・放送・配信される際に関係。
  • レコード製作者:
    原盤(マスター音源)を制作した者の権利。いわゆる原盤権。
  • 放送事業者・有線放送事業者:
    放送・有線放送に関する権利。

出典:e-gov 著作権法第89条

従来通りに人間だけで制作しAIを介さない楽曲であれば、著作権と著作隣接権が重なっているのが一般的です。

たとえばアーティストが発表曲をストリーミング配信する場合、作曲家としての著作権とレコード会社の原盤権の両方が関係します。

問題実例:音楽AIと隣接権の交差点

音楽AIツールは、既存の楽曲を大量に学習データとして取り込んでいます。

既存楽曲のマスター音源にはレコード製作者の著作隣接権(原盤権)が存在するため、許諾のない使用が問題だと主張されるケースが見受けられます。

実際にこの点を争点とした訴訟が複数起きていて、UMG・Sonyをはじめとするレーベルは2024年6月、SunoおよびUdioに対して訴訟を提起しました。

実務的示唆:使う側と作る側のリスクの違い

この訴訟の直接の当事者はAIツールを提供している会社側ですが、その結果は一般ユーザー側にも波及します。和解条件によっては機能が制限され、生成楽曲がプラットフォームから削除されるケースも起き得るからです。

「どのツールを使うか」という選択は、そのツールが抱える法的リスクをも受け入れることと言って良いでしょう。音楽レーベルとのライセンス契約を締結しているか?といったことは判断材料になります。

いくまささん

AI楽曲専門のインディーズレーベルとか出てきそうですよね。

規約上の所有権|サービス側が決めるルール

ここからは著作権法という法律ではなく、各音楽AIサービスが定める利用規約の話になります。

著作権と所有権を混同したまま配信していると収益リスクの温床になることも。

問題構造:著作権と所有権は別物

音楽AIサービスの利用規約には「あなたが生成した楽曲はあなたのものです」という記載があって、これは規約上の「所有権」を定めたものです。

ところが、規約上の所有権と著作権法上の「著作権」は別の話です。規約が所有権を認めていても、著作権法の要件(人間の創作的寄与)を満たさなければ著作権は発生しません。

Sunoを例にとると、プランによって扱いが変わります。

プラン規約上の所有権商用利用著作権
有料プラン
(Pro/Premier)
ユーザーが所有製作プロセスによる
無料プラン
(Basic)
Sunoが所有非商用のみ製作プロセスによる

有料プランへの加入は「規約上の所有権と商用利用の条件を整える」行為で、著作権法上の著作権を発生させる行為ではありません。

出典:Suno Help Center Rights & Ownership(確認日:2026-04-24)

実務的示唆:稼ぐことと守られていること

実際に収益が出ている状態を分解すると次のようになるでしょう。

収益されている状態のパターン

パターンA:
著作権が発生している楽曲の配信
→ 収益の根拠は著作権法+各サービスの規約

パターンB:
著作権が発生していない楽曲の配信
→ 収益の根拠は各サービスの規約のみ

「配信」が前提ですが、パターンAは人間だけで製作した楽曲が主になります。他方、パターンBの状態では、仮に稼げていても著作権という法の防御壁がありません。

また、AIツールやプラットフォームのポリシーが変われば、その収益の根拠ごと変わる可能性もあります。音楽AIツールで楽曲を作り収益が出ている場合でも、その収益がどの権利に支えられているか、説明できない状態が続くと言えます。

著作権を「保険」というと間違っていますが、クリエイター活動にも企業収益にも結び付くのは確かです。

いくまささん

普段使わないのに無いとあわてる通帳みたいな?

まとめ

この記事で整理した権利を並べると、次のようになります。

  • 著作財産権:複製・配信・演奏など、楽曲の使われ方ごとに関係する支分権の束
  • 著作者人格権:名前・公表・改変に関する権利。譲渡できない
  • 著作隣接権:演奏・録音・原盤制作に関わる別レイヤーの権利
  • 規約上の所有権:法律ではなく各サービスが定めるルール

それぞれ根拠も性質も異なります。「著作権がある」と「規約上は自分のもの」は別の話で、「著作財産権を譲渡した」と「著作者人格権まで処理した」も別の話です。

音楽AIツールで作った楽曲で収益が出ている場合でも、その収益がどの権利に支えられているのか。著作権が発生していない状態で収益化している場合、収益の根拠は著作権ではなく各サービスの規約のみに依存している可能性があります。

ご自身がどの位置にいるか気になった方はこちらのページをご覧ください。

参考データ

著作権法(第17条・第18条〜第23条・第59条・第89条〜) e-gov法令検索
https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000048

Rights & Ownership Suno Help Center
https://help.suno.com/en/categories/550145-rights-ownership

AIと著作権に関する考え方について 文化庁文化審議会著作権分科会 https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/pdf/94037901_01.pdf

UMG Recordings v. Suno 訴訟ドケット CourtListener https://www.courtlistener.com/docket/68878608/umg-recordings-inc-v-suno-inc/

確認日:2026-04-24

この記事を書いた人

大本 雅史(おおもと まさし)|行政書士(2019年登録)
遺言相続・在留資格・開発許可等業務を経験後、AI法務整理家へ転身。
著作権法を中心に「公開して大丈夫?」「後で起こるリスクは?」などの場面に、一次ソースの根拠を持って答えることを方針としています。

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