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【100曲で見えた】AI音楽生成の各国ルール【世界法制度万博】

【100曲で見えた】 AI音楽生成の各国ルール 【世界法制度万博】
よくある疑問

Q:AI音楽を海外配信しても大丈夫?

A:AI楽曲を配信する場合はディストリビュータ経由が一般的ですが、これは海外のリスナーも視聴する前提となります。主要各社経由なら安心度は高いと言えますが、各国ごとに法整備が進む中、「知らなかった」で済まないケースもあり油断は禁物です。

AIで音楽を作るうちに、「せっかくだから海外にも出してみたい」と思い立ち、配信に関して調べ始めました。ところがDistroKidやSound Onといったディストリビュータのほとんどは、海外サービスであることに驚いたのです。出してみたいどころじゃなく、既に海外に配信されているわけです。

そして当然ではありますが、世界の様々な国や地域には独自のルールや取り決めがあるのだと、あらためて理解しました。

いくまささん

日本で曲作る分には関係ないのでは?

確かにわたしも遠い対岸の出来事と思っていますが、でも、いざ対岸に渡る覚悟をした場合、火の輪くぐりチャレンジになること必至です。ましてAIが絡む以上、「気づいたら違反だった」では笑えません。

本記事では、そうした調査で知った「AI音楽と海外規制」の豆知識を紹介します。日本で活動する限り直接の影響は限定的ですが、本気で海外展開を考えるならば、理論武装は必須です。

本記事は個人調査の共有であり法的助言を目的とするものではありませんのでご了承ください。

海外展開を考える前に「そもそもAI音楽を商用利用できるのか?」の確認も必須です。次の内容が役に立ちます。

目次

世界のAI音楽規制さんこんにちは

音楽配信に関するリサーチを重ねると、ディストリビュータはアメリカと中国系が大半を占め、規制の面だとヨーロッパは独自のセキュリティ意識が強いとわかります。「世界にどんなAI規制があるのか?」と調べだしたところ、各国のお国柄が見えてきました。

いくまささん

法の万国博覧会ですね。

各国のAI規制ざっくりまとめ
  • EU:世界初の本格AI規制、透明性要件と高額制裁金
  • 日本:推進と規制のバランス模索中
  • 中国:スピーディな管理体制、早期の届出制導入
  • 韓国:アジア初の包括規制、域外適用で日本にも影響
  • 米国:連邦は沈黙、州ごとに693件の法案乱立

ここ数年、AI規制は「理念段階」から「実装段階」に移りつつあります。特にChatGPT登場後、世界は一気に動き出しました。日本で活動する限り直接の影響は限定的ですが、「知っているかいないか」で将来の選択肢は変わるでしょう。

主要ディストリビュータを通じれば基本的に安心ですが、世界の動きを知っておくことで、いざ海外展開する際の準備ができます。

いくまささん

わたしも世界に羽ばたきたかったですよ。

ChatGPT登場後、世界5カ国でAI法はどう変わった?

2022年11月にChatGPTが登場して、わたしもAIツールに興味を持ち色々試しましたが、同時に権利などがどうなるか気になったため法制度の動きを追うようになりました。

でもやはり、AI分野は変化のスピードが速いです。だいたいの場合は、問題が審議されている間に技術が先に進んでしまうわけです。

ChatGPT登場以降、各国のAI法制度は一気に動き出しました。今まで数年かけて慎重に検討していたような規制が、わずか1-2年で成立するケースが続出しています。

AI全体に対する法整備ですが、音楽AIクリエイターに与えそうな影響を中心に、各国の変化を見ていきましょう。今後、目まぐるしい変化に目を向けることが課題になっていくのかも知れません。

いくまささん

世界って広いですよね。

EU:著作権透明性要件を世界初導入

EUのAI Actは大手AI企業を対象としていますが、個人クリエイターにも間接的な影響が広がってきます。AI音楽サービスはEU法に適合するべく仕様変更を迫られ、使用するAIツール自体が変化する可能性も考えられるからです。

SunoやUdio等のAI音楽生成サービスがEU法に準拠するため、出力ファイルに「AI生成ラベル」が自動付与される可能性は充分に考えられるでしょう。ラベルはWMVなど音楽ファイルの情報欄に「メタデータ」として記載されることになるはずです。

またSpotifyやYouTube等がEU法に合わせて、AI使用の有無申告を求めるようになれば、一般クリエイターも対応が必要です。

さらに著作権リスクの増加には注意が必要です。AIで生成した楽曲が学習元の著作権楽曲に似ていた場合、意図せず著作権侵害リスクを負う可能性があります。「Created using AI technology」といった具合に、楽曲メタデータに明記することが信頼性向上につながるでしょう。

EUの変化

ChatGPT登場前
AI規制の検討、議論
ChatGPT登場後
2024年8月EU AI Act発効、2025年8月一般目的AIモデルに透明性要件適用開始

日本:推進重視から規制検討へ

日本では2025年5月28日にAI推進法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)が成立し、法的な枠組みが整備されました。この法律は基本法的な性質で、個人クリエイターへの直接的な規制や義務は限られています。

それよりもむしろ、AI事業者ガイドラインや業界団体が設ける自主ルールが、業界標準として定着していく可能性があります。特に注目すべきは著作権法30条の4(情報解析目的の利用)との整合性かも知れません。

いくまささん

著作権法30条の4とは何ですか?

著作権法30条の4は「著作物を情報解析のために利用できる」という規定です。研究や技術開発の目的であれば、著作物をコピーして解析することが一定範囲で許されます。

AIが学習のために大量の楽曲を取り込む場合、この「情報解析」に当たるのか否かが焦点です。それはAIにも許されると解釈されるのか、それとも制限されるのかで、業界構造は変わるでしょう。今現在、JASRAC等著作権管理団体や文化庁の動きが注目されています。当ブログでも引き続き注視していきます。

日本の変化

ChatGPT登場前
生成AI分野に特別な規制なし
ChatGPT登場後
2024年4月AI事業者ガイドライン公表、2025年5月AI推進法、規制と推進の両立を模索

中国:スピーディな管理体制の構築

中国は早い段階で生成AI管理について制度化しました。個人クリエイターの場合でも楽曲を中国で配信される可能性は高いため、押さえておいた方が良いポイントがあります。

「生成式人工智能服务管理暂行办法(生成系人工知能サービス管理暫定弁法)」は2023年8月15日から施行されており、中国国内でサービスを提供する事業者には届出や監督義務が発生します。個人クリエイターが直接対象になることはあまり考えられませんが、法改正があれば配信サービス側のルールが増えたり厳しくなったりする点は要注意でしょう。

さらに中国もEU同様、音楽にメタデータラベルを義務化する点で共通しています。中国はEUよりも施行が早く、スピード感のある規制が特徴です。

中国の変化

ChatGPT登場前
生成AI分野に特別な規制なし
ChatGPT登場後
2023年8月15日「生成系人工知能サービス管理暫定弁法」施行、届出制導入

韓国:アジア初の包括規制

韓国のAI基本法ですが、これは韓国人ユーザーが使うサービスについて、それが海外で作られたものでも、韓国内では韓国のルールが適用されるというものです。いわゆる属地主義です。この考え方はEUのGDPRにも近いと言えますが、韓国の規制はそれほど厳格ではないようです。

域外適用を明記しており、韓国市場と利用者に影響する海外活動にも適用されるため、日本のクリエイターが韓国で配信する際も対象となる可能性があります。

Melon、Genie Music等、韓国系プラットフォームでの配信を考えている場合、2026年1月22日の施行までに準備が必要です。EU AI Actに準じた透明性要件が導入される見込みで、AI生成表示の韓国語対応(「AI로 생성된 음악」等)が求められるでしょう。

韓国系プラットフォームに配信するのも、ほとんどの場合はディストリビュータ経由になると考えられますが、メタデータへの注記など施しておけば安心です。施行までに準備できる期間はあるものの、韓国配信を行なう予定がある場合は、動向を注視しておいて損はありません。

韓国の変化

ChatGPT登場前
他国の動向を注視する段階
ChatGPT登場後
2024年12月AI基本法成立、EUモデルをアジアで初導入

米国:連邦沈黙で州法乱立

米国はAI規制の世界地図の中でも、最も複雑で混沌としたエリアです。BSA(Business Software Alliance)の調査によれば、2024年だけで45州から693件のAI関連法案が提出され、113件が成立しました。

特に注目はコロラド州でしょう。全米初の包括的AI規制法(SB 205)が成立し、2026年2月1日から施行予定です。対象は「重大な決定に影響するハイリスクAIシステム」で、その中には音楽推薦アルゴリズムやプレイリスト生成AIも入り得ます。要は、個人クリエイターの曲も間接的に影響を受ける可能性があるのです。

いくまささん

今後バズるであろうわたしのヒットサウンドもハイリスクですか?

ひと括りに全てリスクがあるとは言えません。実際にはSpotifyやYouTube Musicなどの大手プラットフォームの対応を通じて、影響が及ぶ形になります。「ペナルティでアカウント凍結」といったことはイメージしやすいでしょう。

カリフォルニア州のCCPA(消費者プライバシー法)ができたとき、YouTubeは全米ユーザー向けにプライバシー設定を拡張しました。言うなればひとつの州のルールをアメリカ向け基準にしたわけで、AIを使った音楽活動もその波を受けるかもしれません。

一方で連邦レベルは真逆の動きです。トランプ政権は2025年1月20日の就任直後に、バイデン政権が出していたAI安全保障大統領令(Executive Order 14110)をあっさり撤回しました。「連邦は緩める、州は締める」という綱引き状態と言えるでしょう。

米国の変化

ChatGPT登場前
連邦・州ともにAI規制なし、技術革新優先の放任主義

ChatGPT登場後
2024年に45州で693法案提出、113法案成立の立法ラッシュ、連邦と州で規制方針が分裂

AI音楽生成にあたり備えておくべきことは?

ここまで世界各国のAI音楽規制について見てきましたが、日本で活動する限り、直接的な影響は限定的です。主要ディストリビュータを利用していれば、基本的な法的要件への対応は安心して任せられるでしょう。

とはいえ、世界は動いています。最低限の準備と情報収集の習慣を持っておくのがオススメです。

実務的対処法①:おさえておくと安心なこと

生成されたAI音楽が実際に海を渡って配信される場合のことをシミュレーションしてみましょう。

主要ディストリビューターは各国の基本的な法的要件には対応していますが、AI生成楽曲特有の新しい義務については、クリエイター側でも最低限の準備が必要になってきています。

最低限押さえておきたいポイント

日本国内中心の活動の場合
現時点では大きな制約はありませんが、AI生成であることの記載や、使用したAIサービスの利用規約確認は習慣化しておくと安心です。「今は大丈夫」でもルールは変わりゆくからです。

海外リスナーを意識した活動
AI生成楽曲であることの英語表記(「Created with AI」等)や、配信先の規制動向を年に数回チェックする体制を作っておくことをお勧めします。完璧である必要はありませんが、「知らなかった」で機会を失うのは避けたいところです。

実務的対処法②:ディストリビュータの守備範囲

主要ディストリビュータであれば、基本的に各国の配信プラットフォームとの契約や法的要件への対応は安心して任せられます。これらのサービスは競争が激しく、不備があると即座に市場から淘汰されるのです。

ただし、AI生成楽曲の表示義務やプライバシーポリシーの整備など、クリエイター側で対応すべき部分もあるため、利用前に各社の最新規約を確認しておくことをお勧めします。

法的紛争が発生した場合の最終的な責任は、基本的にクリエイター自身にあると理解しておく必要があります。とはいえ、主要サービスであれば「想定外のトラブルに巻き込まれるリスク」は低いと考えて良いでしょう。

ディストリビュータ経由でも基本的には安心ですが、以下のような準備をするクリエイターもいます。

最低限準備
  • AI生成楽曲の表示
    YouTube動画説明欄などで「AI-generated music」と記載。現時点で義務ではないが、透明性の観点から推奨される。
  • 専門家との相談体制
    AI法務に詳しい弁護士や行政書士との相談機会を確保。顧問契約は趣味レベルでは過剰なので、都度相談(初回30分無料~1万円程度)で十分。「困った時に相談できる人がいる」という安心感が重要。

実務的対処法③:情報収集のヒント

徹底した情報収集は必要ありませんが、定期的にチェックしておくことは有益です。AI技術は数か月でガラッと変わっていることがあり、気がついたら音楽AIツールも仕様が変わっていた、ということは珍しくありません。

いくまささん

浦島太郎っぽいですよね。

情報収集のためのヒント

日本語で検索してみる

  • 「AI 音楽 規制 2025」
  • 「Suno 利用規約 変更」
  • 「著作権 AI 音楽」

ChatGPTやClaude等のLLMに聞いてみる

  • 「2025年以降、音楽AI規制で大きな変化はありましたか?」
  • 「Sunoの利用規約で注意すべき点を教えてください」
  • 「EU AI Actは音楽クリエイターにどう影響しますか?」

配信サービスから来るメールも、「規約変更」「policy update」と書いてあるものは保存しておくと、後で見返したときに役立つことがあります。英語で書かれてあることがほとんどですが、メール本文をコピー&ペーストして、AI翻訳などで確認してみましょう。

まとめ

海外のAI音楽規制について調べてみると、各国それぞれのお国柄が見えて興味深いものです。日本で活動する限り直接的な影響は限定的ですが、主要ディストリビュータを使っている分には基本的に安心して良いでしょう。

とはいえ、気が向いたときに何か動きはないか検索してみたり、配信サービスからのメールをチラ見するだけでも、変化に気づけることがあるかも知れません。

Q&Aコーナー

よくある疑問

Q:DistroKidやTuneCoreを使えば、各国の規制対応は全部任せて大丈夫?

A:基本的な契約や権利処理、各国の法令への一般的な対応は、サービス側で行なわれています。
ただし、AI生成楽曲の表示義務やトラブルが起きたときの対応など、細かな部分まではカバーされないこともあるので、「完全に任せきり」ではなく、自身で概要を知っておくと安心です。

Q:日本で作った曲を海外配信していますが、EU AI Actや韓国AI基本法の違反になりませんか?

A:今のところ、ディストリビュータを通じて配信していれば、クリエイター本人が直接違反を問われる可能性はほとんどありません。サービス側が各国の規制に対応を進めているためです。
ただし、2025〜2026年の施行以降はルールが厳しくなる見込みなので、ニュースなどで最新情報をチェックしておくと安心です。

Q:海外に楽曲配信したいのですが、プライバシーポリシーは必須ですか?

A:自分のサイトやブログから発信する場合はプライバシーポリシーを載せておきましょう。
一方、ディストリビュータ経由で楽曲を配信するだけなら、特に必須ではありません。
説明欄に “AI-generated music” と書いておく程度でも充分でしょう。

Q:専門家に相談って大げさでは?趣味でやっている私にも必要なの?

A:確かに法律相談と聞くと構えてしまいますよね。もちろん必須ではありません。とりあえず市区町村や商工会の無料相談でOKです。要は、いざという時の備えです。
「気軽に相談できる場所」を知っておくだけで大きな安心になるでしょう。
多くの自治体では月に数回、法律関係の相談日が設けられていて、予約すれば無料で話を聞いてもらえます。

正直なところ、ディストリビュータに丸投げしていれば、AI楽曲配信で困ることはほとんど無いと考えられます。でもそれはインフラ上の安心で、社会的な受け止め方まで保証することはできないはずです。

誰かを傷つける歌詞や誤解を生む内容だと、アルゴリズムは通っても人間社会の審査は通りません。AIを無視することができなくなった御時世、配信先にいる人の顔をイメージすることが、予防法務の勘所になっていくのだろうと思います。

いくまささん

お上は騙せてもこの遠山桜を忘れたとは言わせねえぞ、ってアレでしょうね。

参考データ

European Commission|The AI Act enters into force
https://digital-strategy.ec.europa.eu/en/policies/regulatory-framework-ai

European Parliament|EU AI Act: first regulation on artificial intelligence
https://www.europarl.europa.eu/topics/en/article/20230601STO93804/eu-ai-act-first-regulation-on-artificial-intelligence

European Data Protection Board|Guidelines & Recommendations
https://edpb.europa.eu/our-work-tools/general-guidance/gdpr-guidelines-recommendations-best-practices_en

文化庁|AIと著作権について
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/aiandcopyright.html

文化庁|令和5年通常国会 著作権法改正について
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/r05_hokaisei/

中国国家インターネット情報弁公室|生成式人工智能服务管理暂行办法
https://www.cac.gov.cn/2023-07/13/c_1690898327029107.htm

Korea.net(韓国政府広報サイト)|AI基本法を制定
https://japanese.korea.net/NewsFocus/Policies/view?articleId=264072

JETRO(日本貿易振興機構)|韓国国会で「AI基本法」が議決
https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/01/2b80afa6e6a311b2.html

BSA(Business Software Alliance)|2025 State AI Wave Building After 700 Bills in 2024
https://www.bsa.org/news-events/news/2025-state-ai-wave-building-after-700-bills-in-2024

National Conference of State Legislatures|Artificial Intelligence 2024 Legislation
https://www.ncsl.org/technology-and-communication/artificial-intelligence-2024-legislation

KPMG Japan|2025年上半期世界各国のAI規制現状
https://kpmg.com/jp/ja/home/insights/2025/08/2025h1-world-ai-regulation.html

Stanford HAI|AI Index Report
https://aiindex.stanford.edu/

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