わたしは興味本位で音楽AIの楽曲制作を始めて、掃除や読書のBGMで使えたら良いだろうなと考えていました。すると、おためし段階でも抜群の楽曲ができて、これを収益化に使えないだろうか?という欲が出てきたのです。
AIに生成してもらって適法にダウンロードしているのだし、どのように使ってもわたしの勝手ではないでしょうか。ところが、次のような疑問がわいてきました。
いくまささんAI音楽を商用利用するなど法的にマズいのでは?
この疑問を解決するため、予防法務の観点から調査を開始。気がつけば楽曲は珠玉の100曲をストックするに至り、法知識の蓄積も進んでいました。
本記事では、「AI音楽で安全に収益化したい」という疑問から始まったリサーチ記録を公開します。推測や憶測ではなく、国内外の著作権法や公式資料、加えて実体験に基づく内容となっています。AI音楽を愛する方々が、法的リスクを意識しつつ、収益化に挑戦できる環境作りを目指します。
また、海外配信なら各国のAI規制を知っておいて損はありません。次の記事が役に立つはずです。


音楽AIで作った楽曲で収益化してOK?


収益化は、無料版は原則NG、収益化には有料プランが必須
最初、Sunoという音楽生成AIサービスを知ったのです。面白そうだと試してみたところ楽曲は予想以上の出来栄えで、無料クレジットは即使い切り、規約の確認もそこそこに有料プランを申し込んでいました。
そこから「TikTok収益化のための音楽素材を自作できないか?」と検索したりLLMに聞いたり、しゃにむに情報集めに走りました。でも利用規約の確認を制作の後回しにするというのは、良くない判断です。



クリエイターがハマる落とし穴かも知れませんね。
問題実例①:無料版と有料版の違い
Sunoのプラン一覧表を改めて確認した時、あることに気づきました。無料版は「非商用利用」のみ。収益化は有料プランが必須条件。
Suno公式利用規約によると、無料版で生成された楽曲は「Non-Commercial Terms(非商用条件)」の適用を受け、商用利用は禁止されています。一方、有料プランでは「Commercial Terms(商用条件)」が適用され、生成楽曲の商用利用権が付与されます。
この違いを理解せずに配信を始めてしまうと、配信代行サービスの「権利確認」のステップで、問題が発覚する可能性も否定できません。



🤔権利確認というのは何でしょうか?
DistroKid、TuneCoreなどに代表されるディストリビュータ(配信代行サービス)は、ユーザーが楽曲をアップロードする際、その楽曲の権利保有を確認します。そしてAI生成楽曲については、各サービスで対応が分かれています。
サービス別の対応状況(2025年時点)
- LANDR:AI要素を含むかどうかの開示を要求
- TuneCore:100%AI生成作品は配信不可などの制限あり
- DistroKid:AI生成楽曲の関連ルールは限定的
- CD Baby:AI生成コンテンツは配信不可
- SoundOn:AI音楽に関する公式ポリシーは未公表
一般的に確認される可能性のある項目
- 使用したAIサービス名
- 利用プラン(無料/有料)
- 商用利用権の有無
問題実例②:商用利用権



音楽生成AIで認められる権利はありますか?
ここでは「商用利用権」について説明します。配信代行サービスの「権利確認」に対応するためには、使用するAIサービスの「権利条項」を正確に把握しておく必要があります。
特に無料版と有料版では権利の扱いが大きく異なるため、プラン選択は収益化の成否を左右します。以下、主要サービスの最新状況をまとめました。
Suno(2025年最新)
・無料版:非商用利用のみ
・Pro/Premier:完全な商用利用権(月額利用料に応じた権利付与)
Udio(2025年最新)
・無料版:個人利用のみ(=非商用オンリー:筆者注)
・Standard/Pro:商用利用可(ただし、一定の収益上限あり)
ElevenLabs Music
・無料版:非商用利用のみ
・各有料プラン:商用利用可(プランにより利用条件が細かく設定)
実務的対処法:配信前チェック
配信代行サービスでの審査通過と、後々のトラブル回避のためには、制作段階から体系的なチェック体制が不可欠です。わたしが実際に楽曲を制作する過程で意識した、最低限必要な項目をご紹介します。
ただし、利用規約を全文精読するのはかなり大変ですし、ハードルは高いのが現実です。



街の法律家に見てもらうと安心ですね。
チャットAIに規約内容を要約してもらうのも手ですが、最終的な責任は利用者にあります。要約は参考程度にとどめ、鵜呑みは禁物です。
- 利用規約の権利条項確認
・最新利用規約を確認
・特に「Commercial Use(商利用)」、「Rights(権利)」に注目 - 配信代行サービス対応状況
・AI生成楽曲の取り扱い方針を確認
・必要書類や申請手順の把握 - その他考えるべき項目
・プランの選択基準(予想収益と利用料)
・配信予定や楽曲数に応じたプラン選択
細かいチェック方法や条項の読み方は別記事でまとめる予定です。ここでは「最低限ここを押さえればOK」というレベルに留めています。
収益化を前提とした行為には事前の法的確認が不可欠です。この基本原則を徹底することで、音楽AI制作でのトラブルを極力回避することにつながるでしょう。
重要ポイント
・収益目的なら事前調査が鉄則
・簡易チェックで安心せず必要に応じ専門家確認を
AI生成した曲が、有名曲に似ている…?


プロンプトは、アーティスト名などで類似性リスク大、抽象的表現で回避
ある日、「某有名R&Bレジェンド風のクラヴィネット🎹」というプロンプトで、アーティスト名は実在の人物名のまま楽曲生成したところ、「アーティスト名は使用できません⚠️」という拒否メッセージが出ました。
でも、別の世界的ポップスター名で試したところ、プロンプトにアーティスト名を使ったのにエラーは出ず、世界的ヒット曲をイメージできるものが生成されたのです。知らずのうちにそのままアップロードしたら問題になったかも知れません。



「大好きなアーティスト風にしたい」なんてのは、誰でも考えることですよね。
AI音楽の制作に慣れてくると、自身が推すアーティストの背中を追いたいという欲求が出てきます。しかし、ここに法的リスクが潜んでいることを知りました。
AIシステムは一貫性に乏しく、法的リスクの予測が困難と断じて良いかも知れません。まるで針の無いターンテーブルでフロアを回そうとするのといっしょです。
問題実例①:RIAA訴訟と学習データ取扱
2024年6月全米レコード工業会(RIAA)が、音楽生成AIの開発会社であるSuno, Inc.とUdioを著作権侵害で提訴した事件では、AI音楽の法的な課題が明らかになったと言えるでしょう。
- Suno、Udioは大量の著作権保護楽曲を無許可で学習データに使用
- 生成楽曲が既存楽曲と酷似するケースを多数確認
- 「フェアユース」の主張では正当化できない規模の侵害
この訴訟により、AI音楽生成における「類似性」と「依拠性」の問題が法廷で争われることになりました。
問題実例②:類似性と依拠性
音楽における著作権の侵害は、主に「類似性」と「依拠性」の2つで判断されます。
「類似性」は、新しい楽曲が既存の楽曲と音楽的に似ているかどうかを指し、「依拠性」は既存作品を参考にして制作された事実があるかどうかが問われます。そして両方の要件が認められた場合に、著作権侵害が成立する可能性があります。
AI生成楽曲の場合、学習データに含まれた楽曲への「依拠」を立証することが困難な一方、偶然の一致では説明できない「高い類似性」を示すという問題が浮き彫りになりました。



AI生成の曲が「たまたま似た」のか、「元ネタに寄せた」のか、判断が分かれるかも。
問題実例③:Sony Music大量削除要求の理由
2024年以降、Sony Musicが各プラットフォームに対して約75,000件のAI生成楽曲の削除を要求していますが、音楽業界の危機感の表れでしょう。この削除要求には次のような懸念が背景にあります。
- 既存楽曲との類似性が高いAI生成楽曲の急増
- 権利者の許可なく学習データに使用された楽曲の存在
- プラットフォーム側の対応体制の不備
実務的対処法①:安全なプロンプト作成
アーティスト名を使用したプロンプトは、類似性リスクを大幅に高めます。RIAA訴訟以降、この傾向はより顕著になりましたが、抽象的なプロンプトや音楽表現を使うことがリスク軽減の第一歩になるでしょう。
☠️危険なプロンプト例
- 「○○(アーティスト名)風の楽曲」
- 「△△(楽曲名)のような曲調」
- 「××年代の□□(バンド名)スタイル」
- 「◇◇(有名CM)の雰囲気でメロディ作って」
✅安全なプロンプト例
- 「フォーク調アコースティックギター」
- 「アップテンポなドラムビート」
- 「叙情的なピアノメロディー」
- 「うねるファンクのベースライン」
実務的対処法②:類似性セルフチェック
生成楽曲の類似性判定は、配信後のトラブル回避においても重要です。要は「これくらい大丈夫だろう」という楽観論にリスクありと言って差し支えありません。客観的な判断基準が成功の鍵となります。
簡単4ステップチェック
- KENDRIX(JASRAC公式)またはShazamでメロディ照合
- KENDRIX: 音源ファイルをアップロードして類似性チェック(月4件まで無料)、ブロックチェーン存在証明も同時取得
- Shazam: 曲のサビや特徴的パートを聞かせて完全一致を検出
- 一致が出ればコピーの可能性大→公開前に見直し
- CopyContentDetector(CCD)で歌詞チェック
- 歌詞全文をコピペして判定結果を確認
- コピペ率が高い場合→公開前に要修正
- ミニ第三者チェック
- 信頼できる友人や仲間3人に30秒だけ聴いてもらう
- 2人以上が「似てる」「思い出す曲」回答→公開見送り
- ワンランク上:MIPPIA等音楽特化ツールで確認(任意)
商業配信や収益化予定なら推奨
最低限これだけは
KENDRIX(楽曲・月4件)またはShazam(楽曲)+ CCD(歌詞)
実務的対処法③:削除要求への備え
一般的には、著作権権利者はまずプラットフォーム(Spotify、TikTok等)に、ユーザーが投稿したAI生成物の削除を要求するケースが多いです。Sony Musicの75,000件削除要求のように、実際のリスクは「楽曲の配信停止」が中心になるでしょう。訴訟まで進むケースは例外的ですが、ゼロとは言い切れないため注意が必要です。
実際に起こりうるケース
- プラットフォームからの楽曲削除通知
- 収益化の一時停止
- アカウントへの警告、程度によりアカウント削除
基本的な対応方針
- 削除要求には素直に応じる
- 同様の問題を避けるため制作方針を見直す
- 法的な対応が必要な場合は弁護士に相談
フォロワーが増えて、収益化が軌道に乗った途端、アカウントを削除することになったらショック大です。リスクを最小化するには、安全なプロンプト作成と類似性チェックの徹底が効果的です。またディストリビュータ経由の配信は、楽曲を申請してジャッジする仕組みを取っているため、比較的安心と言えます。
重要ポイント:プロンプトにアーティスト名は避ける🚫
参考データ
Suno|Terms of Service
https://suno.com/terms-of-service
Suno|Community Guidelines
https://suno.com/community-guidelines
Udio|Answers to common usage questions
https://udio.com/usage-questions
Udio|Answers to common copyright-related questions
https://udio.com/copyright-questions
ElevenLabs|Music Terms
https://elevenlabs.io/music-terms
ElevenLabs|Eleven Music v1 Terms
https://elevenlabs.io/eleven-music-terms
RIAA|Record Companies Bring Landmark Cases for Responsible AI Against Suno and Udio
https://riaa.com/record-companies-bring-landmark-cases-for-responsible-ai-against-suno-and-udio-in-boston-and-new-york-federal-courts-respectively/
Rolling Stone|AI’s Most Ambitious Music Generators Accused of ‘Massive’ Infringement In New Lawsuit
https://rollingstone.com/music/music-news/riaa-sues-ai-music-generators-suno-udio-copyright-infringement-1235030254/
TIME|Major Record Labels Sue AI Music Generators
https://time.com/6985922/record-labels-sue-ai-music-generators/
Kill The DJ|Suno & Udio’s Answer to RIAA Lawsuit: It’s Fair Use
https://killthedj.com/suno-udios-answer-to-riaa-lawsuit-its-fair-use/
JASRAC|生成AIと著作権の問題に関する基本的な考え方
https://jasrac.or.jp/copyright/outline/ai.html
JASRAC|「AIと著作権に関する考え方について(素案)」に関して文化庁へ意見を提出しました
https://jasrac.or.jp/info/announce/2024/ai_opinion.html
JASRAC|AIを利用した作品の取扱いについて
https://jasrac.or.jp/info/announce/2024/ai_works.html
NexTone|著作権について
https://www.nex-tone.co.jp/copyright/copyright.html






