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AI音楽をビジネスで使うときの運用設計|権利リスクと初動の在り処

AI音楽をビジネスで使うときの運用設計権利リスクと初動の在り処
よくある疑問

Q.AI音楽ツールで作ったBGMは、商用プランに入っていれば安心してビジネス利用できるのでしょうか。

A.商用利用が許可されていることと、著作権リスクの発生はまた別問題です。利用規約はツールの使用条件を定めたものに過ぎず、生成された楽曲と既存作品に類似性がないとのお墨付きにはなりません。またクレームが起きても対応はしてくれません。

AI音楽をビジネスに組み込むこと自体はとても簡単です。わたし自身、生成した楽曲だけで言えば数百曲はありますから、すぐにでも現場投入できます。

ただ、「商用利用が可能かどうか」と「事故なく運用できるかどうか」は、答えが同じではありません。

本記事では、AI音楽の利用を「合法か違法か」という枠組みではなく、トラブル発生時に合理的な注意を尽くしていたと説明できるか、あるいはそういう設計になっているか、という観点から整理します。

いくまささん

クルマの運転はできるけど事故るかは別物、みたいな?

本記事は個人調査の共有であり法的助言を目的としませんのでご了承ください。

AI音楽の類似性問題については、以前の記事でもまとめています。

目次

AIが生んだのは既にあるリスクの拡張

AI生成音楽を事業に組み込むこと自体、技術的に難しくはありません。動画やイラスト、音声にしても本質は同じと考えられます。問題はそれを事故なく運用できる設計になっているかどうかです。

その設計を考えるとき、確認しておきたいのが「AI以前の著作権リスクはどう処理されてきたか?」ということでしょう。ここを整理しないと、AIが何を変えたか見えてきません。

問題構造①:AI以前のリスクはどこにあった?

事業者がBGMを使うシーンの代表例として、「広告制作会社に外注する」、「音楽素材サービスのライセンスを使う」、「JASRAC管理楽曲を使用するなら使用料を処理する」などの選択肢があります。

こうした方法を選ぶ場合、著作権リスクの大部分は「ほかの誰かが引き受ける」という構造です。

外注先の制作会社が権利処理を担い、素材サービスがライセンス範囲を保証し、JASRACが管理楽曲の使用料を一括で管理する。想定されるリスクはこうしたレイヤーを重ね処理されてきたと言えるでしょう。

裏を返すと、「著作権リスクは処理しなければならないもの」という当事者意識は、どこか薄い空気感で広がっていたのかもしれません。AI以前から著作権リスクは当然に存在していたのに、です。

問題構造②:AIが変えたのは発生速度と規模

AI音楽ツールを使い音楽を自社ビジネスに組み込む場合、事業者は自分で楽曲を生成し自ら使用することになります。著作権等の権利処理を担う中間レイヤーの登場する余地が、発生しにくいと言えます。

AIは大量かつ高速でアウトプットを生み出せます。既存著作物に類似してしまうリスクの種類は変わらず、しかし発生する頻度と影響範囲は大きく変わりました。外注で月数本だった制作が、AIで月100本になれば、類似性問題の生じる確率を同じように括るのは不相応でしょう。

事業者が直接ツールを操作し、直接コンテンツを公開し、直接権利処理の責任を引き受ける。この構造の変化は、リスクの立ち位置を変えました。

法的位置づけ:「知らなかった」が通りにくい理由

AI関連の著作権リスクは2024年以降広く報道され、世界中で議論されています。米大手レコード会社(UMG・Sony・Warner)によるSuno訴訟は、訴訟当事者への話だけではなくなっています。(Case 1:24-cv-11611、2026年3月確認)

AI音楽ツールを使う側にも、学習データの権利処理をめぐる議論が、無関係と言い切れない状況になっています。知識の有り無しはすでに超え、現在、知った状況下で何を設計したかが問われる段階なのかも知れません。

この問題は「注意義務」の問題として整理されます。民法709条(不法行為責任)における注意義務は、「その時点で合理的な行為者が知り得た情報」をベースに判断されます。

当然ながら報道をすべて把握することは不可能ですが、世界中で広く議論されているリスクについて「知らなかった」を根拠に、注意義務を免れることは難しくなっています。

いくまささん

タイムラインばかり回すのは疲れますよ。ハムスターのように。

ひとくちメモ

2024年6月、米レコード会社3社がSuno, Inc.を提訴した際の主な主張は、Sunoが大量の著作権保護楽曲を無許可で学習データに使用したというものです。

この訴訟はAI開発者を対象とするものであり、ツール事業者は直接の被告になりませんでした。ただ「学習データの権利処理は誰が担うべきか」という問いかけは、AI音楽ツールを事業に使う側の設計にも、無関係とは言い切れません。

AI音楽ツールを導入するとき、多くの事業者は「使えるかどうか」「稼げるかどうか」を確認します。ただ、「問題が起きる前に何をしていたか」「それを説明できるか」と問われる可能性も存在します。

「利用可能」と「安全に使える」は別の問い

商用に使えるプランを契約したし利用規約も読んだ。「これで商利用できる」と判断したいところですが、今一歩チェックしたいところです。もちろん判断として間違っていませんが、「利用可能」と「安全に使える」は少し異なります。

問題構造:商用プランが意味することしないこと

有料プランへの加入は「ツールの商用利用が許可されたこと」を意味します。

だから、生成物が既存著作物と類似しないことの保証などではなく、万が一クレームが来たときに守ってもらえる保証もありません。利用規約はツールの使用条件を定めたものであり、生成物の安全性を担保するものではないのです。

この混同が、事故が起きたときに初動を遅らせるケースも考えられます。

問題実例:留保条項が意味すること

Sunoの利用規約(ContentセクションSuno assigns条項、2026年3月確認)は、アウトプットの権利をユーザーに譲渡すると明記しています。ただし同じ条項の中に、「著作権が実際に発生するかは保証しない」という形で留保されています。

権利を譲渡するけれども、その権利が存在するかどうかは知らない、と言い換えることができるでしょう。そのまま「権利はこちらにある」と事業設計を進めると、後から足元が揺らぐことになりかねません。

いくまささん

ややこしいですね。ジャイアンくらいシンプルなら良いのですが。

法的位置づけ:JASRAC管理対象外とクレームリスクは別の話

JASRACは2025年2月付けの公式資料で、AI自律生成物を管理対象外としました(JASRAC「AIを利用した作品の取扱いについて」確認日:2025年2月)。

「管理対象外」はJASRACへの使用料が不要になり得ることを意味します。ただそれだけでは、既存楽曲との類似性チェック責任が消えることは無く、また別の話です。

JASRACが関与しないということは、クレームが発生した際に協同できる存在がなくなるわけで、著作権権利者が直接出てくる可能性も否定できません。管理外になることで、交渉の相手が誰なのかわからなくなることもあり得るでしょう。

実務的示唆:「使ってよい」と「事故らない」の狭間

利用規約の確認は入口に過ぎないと考えられます。その先に「類似性の確認」「生成プロセスの記録」「外注契約の整備」という、誰も自動では埋めてくれない空白があります。

同じツールを使っていても、この空白を埋めた事業者と埋めなかった事業者では、事故後の立場が変わります。

もっとも空白を埋めると言っても、完全なリスクゼロを目指すことではなく、おそらくそれは不可能です。「この時点でこういう確認をして今に至る」と、説明できる記録を残すことだと考えられます。

文化庁「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(2024年7月31日)も、「全て実施すれば法的責任を問われないわけでもない」と明記しています。設計の目的は保証ではなく、説明できる状態をつくることだと整理しておくと、取り組みやすくなるかもしれません。

事故が起きた夜:最初の24時間で何をするか

ある月曜の20時すぎ、1通のメールが届きます。送信元は見知らぬ法律事務所。件名は「著作権侵害に関するご通知」。

前に公開した動画のBGMが、既存楽曲に類似しているという内容です。AIツールで生成した曲でした。有料プランを使っているし、利用規約も読んでいたのに。

ただの想定ですが、こういう場合は初動でどう動くかが、その後の対応コストと結果を左右します。

いくまささん

本当にありそうでこわいですよね。

問題構造:感情的な初動がリスクになるケース

クレームを受け取った直後、即座に謝罪メールを送ってしまうケースも考えられます。相手の主張を認める返信をしてしまったり、金額の話に入ってしまったりすることもあるかも知れません。いずれも善意からの行動ですが、後の対応を難しくする場合があるでしょう。

「どうにかしなければ」という焦りは自然です。でもクレームメールを受け取った直後の返信は、法的な意味を持ち得ますし、その場の感情で書いた一文が、想定外の重さを持つかもしれません。

問題実例:最初の24時間でやること

相手への返信は「確認中」の一文のみ。そのあいだに、以下を整理します。

  • クレーム原文の保存(ヘッダ・添付含む)
  • 使用箇所の洗い出し(媒体・公開範囲・使用開始日)
  • 生成経路の確認(ツール名・プラン・プロンプト・生成日時)
  • 外注案件であれば委託契約書の確認
  • 相手楽曲との類似性の一次確認(第一印象レベル)
  • 一時停止するかどうかの判断
  • 社内への一報

一時停止はリスク管理の一部で失敗ではなく、証拠保全と状況整理のため必要な判断になり得ます。ストップすることで、後から選択肢が広がるケースがあります。

法的位置づけ:外注しても発注者の注意義務は消えない

制作を委託している場合なら「AIを使ったのは外注先」という状況もあるはずです。

ただ、外注先がAIツールを使用していた場合でも、発注者側の注意義務が自動的に消えるわけではありません。委託契約にAI使用の有無や条件を明記していなかった場合、責任の所在が不明確になります。

なお、発注者注意義務に関する具体的な裁判例については、現時点で確認できた一次ソースがなく、断定的な記載を避けます。

実務的示唆:初動で差がつくのは「記録」

24時間以内に情報整理したり、とれるリアクションは、事前にどれだけ記録を残していたかで変わります。

生成日時、プロンプト、使用ツールのプランを日常的に保存していた事業者と、していなかった事業者では、動き方がまるで違います。記録があれば「いつ何をどう生成したか」をすぐに説明できますし、記録がなければ、まず事実の再現から始めることになります。

初動の対応速度はビジネス展開前の設計に拠るでしょう。

「説明できる状態」をどう作るか

完全なリスクゼロは、法律の専門家でも約束できません。

目的は全て潰すことではなく、「この時点でこういう判断をした」と説明できる状態をつくることです。

実務的対処法:導入前に残す5つの記録

例えば次のようなものがあれば、初動チェックリストをすぐに動かせます。作成はスプレッドシートで十分でしょう。

  • 利用ツール名・プラン・利用規約の確認日:いつの時点でどのプランを使っていたかの記録
  • 生成時のプロンプト:何を意図して生成したかを後から確認できる状態
  • 類似性確認の実施記録:確認方法・実施日・結果
  • 外注契約書(AI使用条件の明記有無):委託先がAIを使っていたかどうかの把握
  • 社内運用ルールの制定日と周知記録:誰がいつ何を決めたかのログ

実務的示唆:AIは補助するが、設計責任は代替できない

AI生成物に関するクレームが発生した場合、責任を問われるのはAIツールではなく、使用・発注・公開した側です。「AIがやった」では責任免除されません。

「以前は外注先が引き受けていた著作権確認を、今は誰が担っているか」というポイントをチェックし、設計の空白を埋めるのがベストのはずです。

同じツールを使っていても、空白を埋めた事業者と埋めなかった事業者では、事故後の立場が変わるでしょう。

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この記事を書いた人

大本 雅史(おおもと まさし)|行政書士(2019年登録)
遺言相続・在留資格・開発許可等業務を経験後、AI予防法務家へ転身。
著作権法を中心に「公開して大丈夫?」「後で起こるリスクは?」などの場面に、一次ソースの根拠を持って答えることを方針としています。

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